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運送会社アルバイトと無断同乗者の大ケガ

  • 執筆者の写真: office138
    office138
  • 2021年1月17日
  • 読了時間: 3分

精神疾患の労務トラブル
無断同乗者の交通事故

Q:当社は運送会社です。アルバイトが友人を無断同乗させ事故が発生しました。今後の予防策は?

 A君をアルバイト運転手として雇いました。ところが、会社が禁止しているにもかかわらず友人B君を同乗させ事故を起こしました。事故は信号で停車中の車に後ろから追突しています。会社にはどのような責任が生じますか?また、今後の予防策はどのようなことが考えられますか?


A:会社として、営業車両に部外者を乗せることを予防する具体的な方策をとっていないと使用者責任が生じます。よって、事前に営業車両に部外者を乗せないための予防措置を講じるべきです。

(1)営業車両に部外者を乗せない予防措置例とは

 判例では、営業車両に部外者を同乗させるべきでないと口頭で説明しただけでは、会社の責任が免除されないと明示しています。よって、下記のような予防措置が必要となります。

  • 営業車両に部外者を同乗させることを禁止した規定を定める

  • 採用時や研修等において部外者の同乗禁止を説明し誓約書を取得する

  • 走行経路や出発時刻、帰社時刻を具体的に指示しする(業務外の経路は禁止する)

  • テレマティクスやデジタルタコグラフ等のシステム(車に通信機器を搭載し運行経路や速度等を会社で管理できるもの)により運行記録を管理し記録を残す

  • 運行管理の記録で問題のある従業員に対しては指導を行い記録を残す


(2)部外者を無断同乗させ事故、会社に高額の賠償責任を認めた判例

 平成15年11月10日午後2時55分ごろ19歳のA君が友人のB君を同乗させ、中央線を越え対向車と正面衝突した。A君は死亡、B君は重い後遺障害(2級1号)となってしまった事故です。

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 B君とその両親は、会社に対して2億3千万円の損害賠償(運行供用者責任、使用者責任)を求めました。


 裁判の結果、会社は1億8846万円の損害賠償を支払うこととなりました(名古屋地裁 平成25年2月21日判決)


 この判例から学ぶべきことは、禁止事項を口頭で説明しただけではダメで、具体的な予防措置が必要ということです。


(3)このようなケースでは自動車保険は役に立たない

 今回のご質問や上記判例のケースでは、自動車保険は役に立ちません。こちらに100%の過失がある事故ですので相手からの保険金はゼロです。当方の自動車保険にも「人身傷害保険」という運転者や同乗者が死傷した場合に支払える保険がついてます。しかし、この「人身傷害保険」は会社の損害賠償金としては認められません。理由は、保険金の受取権利(被保険利益)が死傷した人(もしくは相続人)にあり、会社が受取人ではないためです。


 このようなケースに対応できる「使用者賠償責任保険」というものがあります。当該リスクをカバーできていない会社様は是非検討を強くお勧めします。



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